PEOPLE

TOKYO NODE LAB始動!
企業とクリエイターと街をつなぐ新たなエコシステム

2023.10.6 (Fri)

TEXT BY SHUNTA ISHIGAMI
PHOTO BY SHINTARO YOSHIMATSU

「TOKYO NODE」を知る上で鍵となる存在が、虎ノ門ヒルズステーションタワー8Fにつくられた「TOKYO NODE LAB」だ。森ビルやバスキュールを中心に20社近い企業が参画するこのラボは、ボリュメトリックビデオ技術をはじめとする新たなテクノロジーの実験を行う場であり、これまで都市開発に関わることの少なかった多くのクリエイターや企業をこの街へ巻き込むための運動体でもある。商業・オフィスビルらしからぬこの異色のラボは、いかにして生まれたのか。森ビル 新領域事業部・杉山央とバスキュール代表・朴正義のコメントからその野望を紐解く。

「ハード」を駆動させる、新しい「ツール」が必要

「TOKYO NODE」がスペースを構える虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの8Fにつくられた「TOKYO NODE LAB」。その名のとおりTOKYO NODEと連動するこのラボには、異なる領域の企業が20社近く参画しており、施設の中にはボリュメトリックビデオの撮影を行えるスタジオも併設されている。展示やイベントを行う施設がラボを構えることは珍しいことかもしれないが、その体制がTOKYO NODEをより個性豊かな施設にしていると言えるだろう。

「虎ノ門の未来を考えていくなかで、この街には新しいテクノロジーを生み出す力が必要だと感じていました。だからTOKYO NODEもホールのようなハードをつくるだけでは不十分だと思ったんです。この場所から新しい価値を生み出すためには施設を使いこなすための新しいツールが必要だし、そのためには専門的な技術や知恵をもったチームが必要ではないか、と」

構想段階からプロジェクトに携わっていた森ビル 新領域事業部の杉山央はそう語り、虎ノ門が世界へ新たな文化や情報を発信していく街になるためには、先端的なテクノロジーを扱える場やチームが必要だと考えていたことを明かす。そんなときに出会ったのが、現在ラボを牽引しているバスキュールの朴正義だった。以前からインターネットや都市、宇宙などさまざまなフィールドで活躍してきた朴と意見を交わすなかで、虎ノ門をリアルとデジタルの体験が入り交じる「ダイナミックデジタルツイン」の都市にするアイデアが生まれたのだと杉山は振り返る。

ラボのスペースの内装は、スキーマ建築計画によって設計されたもの。

「これまで都市開発に関わることの少なかった企業やクリエイターが関われる街をつくることで、虎ノ門から新たな価値を提案できるのではないかと考えていました。そのためには、誰もがステークホルダーとしてまちづくりに関われる環境を整える必要がある。その手段として、虎ノ門の街をデジタルツイン化すれば多くの人がこの街に関われる機会も増えますし、建物や街をクリエイターの表現の場に変えられるんじゃないか、と。たとえば、ボリュメトリックビデオスタジオを使ってアーティストを3Dで撮影し、XR技術を使えばビルの上や街の中をライブ会場へ変えられるかもしれない。虎ノ門の街そのものがデジタルツインになれば、TOKYO NODEから生まれた表現も街全体へと広がっていくと思いました」

もちろん、森ビル一社だけでラボがつくれるわけではない。ダイナミックデジタルツインの構想を実現すべくボリュメトリックビデオスタジオをつくることは決まっていたが、表現や発信の場をつくっていくためには多くのパートナーが必要だ。かくして新たなラボの立ち上げに向かって、朴を中心にパートナー企業探しが始まったという。

たとえばダイナミックデジタルツインを開発して大量のデータをやりとりするためには通信キャリアのパートナーが絶対必要だという考えからKDDIがラボへ参画し、ボリュメトリック撮影のためにはキヤノンと日本IBMが、そしてテクノロジーを活用した新たな体験コンテンツの創出や次世代を担うクリエイターの育成の為に日テレが……と、さまざまな役割を担ってくれる企業が徐々に集まっていき、ラボの中核メンバーとなっていった。

ラボに集まった個性豊かな企業は、10月10日・11日に行われるイベント「TOKYO NODE : OPEN LAB」にも登壇するという。

多様な企業から生まれる多様なプロジェクト

現在、TOKYO NODE LABには20社近い企業が名を連ねている。そのラインナップは実に多種多様であり、今後このラボから次々と新たな体験が生まれてくることを感じさせる。

なかでもラボの中核を担っているのは、キヤノンと日本IBMによるボリュメトリックビデオスタジオだ。このスタジオでは、都心の立地であることを生かし、多くのクリエイターが気軽にボリュメトリックビデオ撮影を通じた実験を行えるようにすることを目指している。

「ボリュメトリックビデオのような敷居の高い技術をみんなが体験できる場所をつくることで、これまでにない表現やサービスが虎ノ門に実装されていくと思っています」と朴は語る。ただ撮影を行うだけでなくすぐそばにデジタルツイン環境の整った虎ノ門という実験フィールドがあることで、デジタルとリアルを往還した体験がつくりやすくなるとも言えるだろう。その目的はただのデジタルコンテンツをつくることではなく、クリエイターをはじめとする新たなプレイヤーがまちづくりに関与することで豊かな都市体験を生み出すことにある。

ボリュメトリックビデオスタジオでは、さまざまな実験が行われることになりそうだ。

もちろん、ほかの企業もラボを介しながらそれぞれの強みを活かした活動を展開していく予定だ。たとえばnoteであればラボメンバーのための発信の場を提供し、『BRUTUS』は雑誌の刊行と連動したイベントの企画も検討されている。『WIRED』や『Forbes』といったメディアは、TOKYO NODEを使ったイベントを行うことなどで、各界のクリエイターや起業家が虎ノ門へと集まってくるきっかけをつくっていくことを検討している。ホールではJ-WAVEも新たな音楽イベントを構想しており、EEXも新しい映像体験をつくりだそうとしている。XRコンテンツ開発ツールを提供するSYMMETRYがいれば、TOKYO NODE内外を問わず刺激的な体験が提供されるようになるだろう。さらに朴は、今後サニーサイドアップグループとともに新たな記者会見会場も立ち上げたいのだと続ける。

「いま国内で使用されている記者会見会場は、いくつもの課題を抱えています。たとえばクローズドな会員制がとられておりオーセンティックなメディアしか入れない、設備が古くワイドショーで取り上げられる著名人しか情報を発信できないなど、市井の声を取り上げられない状況にある。これからの記者会見会場として、リアルの空間だけでなくネット配信環境を整えたデジタルツイン会見会場をつくれたら、取材に参加できる人も増えますし、多様な人が発信できるようになるはずです。ぼくたちは新しい記者会見会場をつくって、さまざまな人が情報発信を行える場所を整備したいんですよね。多くの人による発信の場が生まれたら、この街の価値も上がっていくかもしれませんから」

それはまさに、虎ノ門という街のステークホルダーが増えていくことでもあるはずだ。サービスやプロダクトを提供するオフィスや商業施設とそれらを享受する住民といった単純な二項対立をつくるのではなく、両者をなめらかにつないでいくこと。誰もが街を変えられる実感を得られること。TOKYO NODEがつくり出す「情報発信拠点」とは一方通行の発信ではなく、相互の発信を可能にする場なのだろう。

ラボは参画企業のオフィスとしても使われるため、領域の異なる企業の交流の場にもなっていくだろう。

サステナブルな「年中行事」をつくる

TOKYO NODE LABを説明していくなかで、朴はたびたび「サステナブル」という言葉を使う。「ラボ」と呼ばれるような場所はしばしば実験的であるがゆえに継続することが難しくなったり先鋭的になったりしてしまうことも少なくないが、朴がラボを通じて見据えているのは虎ノ門、ひいては東京という都市と深くつながった生態系なのだろう。

「TOKYO NODE LABを通じて、新しいことに挑戦したい人が毎年集まるようなイベントをつくっていきたいですね。それも単発で終わってしまうようなものではなく、この街の“年中行事”をつくりたいんです。街の中でイマーシブシアターのようなイベントを行うことにも関心があるし、ラボメンバーとして博展さんに入っていただいたことで、継続的にイベントを実施できる体制もつくろうとしています。クリエイティブのあり方が多様化しているからこそ、さまざまな人が活躍できる舞台をつくらなければならない。ぼくたちはこのラボで、技術を駆使した派手なコンテンツを世に問うだけではなく、技術を駆使することで実現できるオープンでサステナブルなエコシステムをつくっていきたいと思っています」

クリスマスや夏祭り、ハロウィーンに匹敵するような年中行事をつくること――それは、どんな人でも参加できる、インクルーシブな場をつくることだろう。そんな行事をつくれたとしたら、虎ノ門の街のイメージも大きく変わっていくはずだ。

TOKYO NODE LABはただ新たなテクノロジーの研究・開発を行う場所ではない。それは虎ノ門の街とクリエイター・企業との結節点を増やす場所であり、より継続的に新たな価値や体験が生まれつづける場所をつくろうとする運動体のことなのだろう。ラボから生まれた運動は街全体へと広がっていき、常に虎ノ門へ活気をもたらす“エンジン”となっていくのかもしれない。

2023.12.12 緊急時のお知らせ

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